地域によって差はあるものの、大規模接種、個別接種は始まっています。接種段階での混乱はまだしも、一番心配されるのは”予約”です。本日はこの予約について、考えていきたいと思います。
メディアでの報道(あおっていますので、ある程度フィルターがいりますが)でも地域によっては大混乱になっているようです。予想されたケースが多く、国の予知不足も大いにありますが・・・。
大規模接種会場はともかくとして、先生方の一番の関心事は「個別接種」。
通常診療を続けていく中での予約ですので、なるべく混乱をしないよう効率よく予約をとっていきたいと考える先生が多いと思いますが、結局方法は医療機関まかせで試行錯誤で開始していることでしょう。
方法として、電話・Web・直接の3パターン、もしくは併用になるでしょう。どの方法においても一長一短があり、特に今は比較的Webに弱い高齢者ですので電話か直接来院頂く方法を取らざる得ません。なにせ初めての事ですので、これが一番良いという方法は今のところありません。自院に合ったベターな方法をスタッフさんと一緒に考えていかなくてはなりません。
予約を取るにあたり、忘れてはならないポイント
今回、お客様からも多くのご相談を頂いています。私自身も試行錯誤ではありますが、10軒以上のクリニックの事例を集めていますので、ご参考になることがお話しできるかと思います。
1.各年齢層の患者さんが、どのような行動をとるかを真剣に考えてシミュレーションしておく。
これは根本的な考え方で非常に大切です。まずはこの考えを頭に入れて下さい。敵を知ることが兵法の基本です。
ワクチン予約の最初の患者さんは75歳以上ですね。個人差はもちろんありますが、この年齢層は一般的にWebに弱い年齢層です。にもかかわらず、自院の都合でWeb予約のみにしてしまうとわざわざ混乱を引き起こすことになります。Web予約の方法がわからないという電話での質問がおそらく増えると想像できます。その対応に時間を取られますので、Webのみというのは避けた方が良いでしょう。
自院の患者さんを頭に浮かべながら、どうするのが一番良いかを考えてみてください。
2.患者さんとのやり取りを、マニュアル化しておく
「そこまでしなくてはいけないの?」。これが実際に私が受けたご質問ですが、たしかに一応話あって意思統一されているので、やり取りも問題ないかも知れません。でも人によって話し方やニュアンスの違いは絶対にあります。きちんとトーク集、想定問答集くらいは作っておけば安心ではないでしょうか?
3.実際に予約をしている日のシミュレーションを実施する
またまたそこまでしなくても・・・という声が聞こえてきそうですね(笑)。確かにやらなくても間違ってはいませんが、実際に行っておくメリットは大ですよ。考えていたのとのギャップもわかりますし、思ってもいなかった事実がわかったりします。是非お勧めします。
4.高齢者予約の反省を行い、接種者の多い現役世代予約に役立てる
おそらく様々な失敗例、成功例などが出てくると思います。その経験値を一番ボリュームの多い現役世代の予約に役立てましょう。高齢者予約が一段落した段階でミーティングを開き、スタッフ全員しっかり話し合う機会を作ると良いです。
5.ワクチン接種は利益を稼げる手段という認識を持つ
当然ながら経営なくして医療は成り立たないので、利益がいくら上がるかも計算しないといけません。国にとってワクチン接種は今や最大のテーマ、かなり予算を突っ込んできています。
クリニックの場合、1回接種で2,070円に加えて回数・日数に応じて2,000円~3,000円のプラスオン、また定額10万円の交付金なども検討されています(詳細は厚生労働省HPなどでご確認下さい)。
国際的に批判が集中している接種の遅れを一気に挽回しようと、血税を投入しています。
ここではコロナ対策の稚拙さについては言及しませんが、医療機関にはフォローです。
競争の激しい都市部では、一部通常診療を止めてでも利益率の高いワクチン接種に特化しようと考えている医療機関(特に耳鼻科、小児科などのコロナでの収益復活が遅れている単科開業医)があるとのこと。確かに仕入れゼロのワクチンですので、打てば打つほど利益は上がりますね。
こういう事もしっかり計算しながら、ワクチン予約に臨みましょう。
当たり前のことばかりですが、意外とやられていないのが現状です。社会的使命があるとはいえ、通常の診療にプラスオンですので大変だと思います。しかしこういうイベントを乗り越えていくと、スタッフも成長します。ですからなるべくスタッフの自主性に任せ、スタッフの学びの場にして頂けるとより強いクリニックになると思います。