医業経営コンサルタント会社 ブレイブワンコンサルティング代表の岡本と申します。三重を拠点に主に東海地方、遠方はオンラインでコンサルタント業務を生業としています。
従来の手法ではない新しいコンサル、顧客に伴走するコンサルを心がけて、微力ながら医療に貢献したいと考えています。
新年明けましておめでとうございます。昨年も多くの方にご支援頂き、またご縁も頂戴し無事に新年を迎えることができました。
今年も宜しくお願い致します。
昨年はコロナ禍が加速させた医療DX、仕組みの変革などのお話をいろいろして来ました。今年はどんな風が医療界に吹くのか、不安も期待もあると思います。私が考える医業経営改革のポイントは、ズバリ「人」です。
企業は人なり
「企業は人なり」
この言葉は随分前から言われており、異論がある方はほとんどいないと思います。しかしその為に経営者がしなくてはいけない事を実践できていますか?と問われるとどうでしょう?
「勉強会もたまにですが行っているし、毎日朝礼もやってます!」
「理念を毎朝唱和してますので大丈夫!」
「給料や待遇も市場並みだし、スタッフを大事にしていますよ」
等々クリニックでもこのような事は行っているとは思いますが、これだけで良いのでしょうか?
企業として売上を立て利益を得るために、働く人に対して何をやっているかが勝敗の分かれ目です。「死に物狂いで頑張って来い!」という精神論でムチをふるう経営者や上司がまだたくさんいるらしいですが、こんな事をしていては絶対に勝つことは出来ません。
働く人を育て、守り、共に成長していかなくては成し遂げられないのです。
先生、「企業は、クリニックは人なり」と胸を張ってお話出来ますか?
クリニックの成果物とは?
医療機関、クリニックが顧客である”患者さん”に提供出来る成果物は、診断や治療、検査、薬剤などを含めた医療サービスです。
薬以外は無形のサービスを提供することで、患者さんの病気を治療したり不安・悩みを解決するお手伝いをして対価を得ているわけですね。
他の業種と比較してみましょう。例えば飲食店の成果物は、ラーメンであったりお寿司のような有形物です。TOYOTAであれば、車が成果物となります。成果物が有形の場合ももちろん人が作るのですが、形のあるモノを提供出来る点は大きな違いだと思います。お客さんも評価がしやすいのではないでしょうか。
しかし医療などの無形のサービスは評価がかなりバラつきますし、人によって提供するサービスにも差がつきやすい職種と言えます。
有形、無形どちらにせよ、それを作っているのは人。人の出来不出来で成果物が大きく変わってきます。ここが企業は人なりという、根本的な部分ですね。
クリニックにとって院長先生の診療が最も大事で、車に例えればエンジンです。しかしエンジンが高性能でさえあればそれで良いかというとそうではなく、エンジンのパワーを末端に伝えるためのトランスミッションだったり、路面に伝えるタイヤの性能も非常に重要です。
ここでいうトランスミッションやタイヤが、スタッフさんなのです。スタッフさんの出来次第で評価は大きく変わってきます。
スタッフを育てるとは?
スタッフを育て、レベルを継続的に上げていくには、どうしたら良いのでしょうか?
採用
入職してからの教育も当然大切ですが、そもそも良い素養を持っ人材を採用することから考えていかなくてはなりません。
特に注意すべき点は、現代の採用状況は以前と比べて大きく変わっているということです。
今の20代の人たちの価値観は、お金よりも時間。しかし完全な個人主義かというとそうでもなく、社会貢献もしっかり考えています。やりがいを含めた自己実現も必要で、アメリカ型のキャリアアップというよりも、自分に合った身の丈キャリアの形成だと思います。
そういう若い人が増えている採用市場に対して、従来のような考えや手法で勝てるわけがない。相手が変わってきているのに、相変わらずの採用手法では良い人材にヒットすることはかなり難しいでしょう。私のクライアントでも、履歴書に写真を貼ってこない応募者が多いそうです。これはエントリーシートに慣れた世代だからかも知れませんし、途中で何も連絡なしに辞退というケースも増えています。
クリニックで採用を担当する院長先生や奥様と、スタッフさんとの価値観のズレがどんどん大きくなっている傾向です。しかし、そういう価値観を持った応募者にも対応していかなくてはいけません。
採用媒体に掲載している訴求文や内容を変えたり、地域への貢献をアピールする内容に変えることも大切です。また面接だけではなく、事前面談や見学などカジュアルに応募者と接する機会をたくさん作る努力も必要ではないでしょうか?
教育
良い人材を採用出来たとしても、安心は禁物です。入職してからの教育が非常に重要で、どういう教育をしていくかを予め考えておくことが必要です。
仕事の教えていくのは経営者の義務ですので、いろいろな場面を想定しながら教育の仕組みを創っていきましょう。マニュアルや教育用の動画も準備しておくと、喜ばれると思います。
また先輩スタッフの教え方にも注意が必要です。人によって教え方や教える内容が違うのは仕方ありませんが、あまりに違うと不信感を招いてしまいます。内容や教え方など、スタッフ間でもよく相談しておくことが大切です。
非常に重要な教育の仕組みを、案外おろそかにしてはいませんか?
トレーニング
ここでお話するトレーニングとは、大きく分けて「OJT(オン・ザ・ジョブトレーニング~業務を通じた教育)」と「自己啓発」です。
ひと通りの教育が終わったら(場合によっては平行しながら)患者さんと直接接する機会を与えて机上の知識を経験に変えていかなくてはなりません。
ここで大事なのは、独り立ちをさせつつ、温かく見守って必要ならすぐにヘルプをすること。よくあるのが、いきなり現場に放り出されるケースで、昔はよくありました。私も入社して1か月も経たないうちに、いきなり医療機関周りをさせられました。これはこれで良い経験ではありますが、今の若者には馴染まずブラックだと言われる可能性大です。
教育担当の先輩スタッフが隣にいてあげるとか、すぐそばで内容を聞いてあげることも大事ですね。初めての経験ですので怖がらずに安心して挑戦できる状況を作ってあげたいものですね。
また本人の能力を上げること、引き出しを多くすることも大事。同じ業務をしていても人によって成果が違うことはよくありますが、これは人の違いによるもので、行う人の器で成果は変わります。
ですので器を大きく出来るよう、本人に啓発を促したり、教材を与えたりしていかないと成長出来ません。
良い素材をダメにしないよう、経営者はしっかりと育てないといけません。
まとめ
本日は年始号ということで、「2023年のクリニック成長に欠かせないポイント」についてお話しました。いかがだったでしょうか?
わかりきった事ですが意外と出来ていない事で、私が今まで見てきた医療機関や企業でもしっかり出来ているところは非常に少ないのが現状です。小手先のDXに走る方が簡単ですが、永続的に繁栄させていくには必須の要素だと考えます。
真剣に取り組めば、大きな成果が出る根幹的なテーマです。先生方に置かれましても、是非今年の重要なテーマにして頂けると幸いです。
それでは、また次号でお会いしましょう。
編集後記
先生方も久しぶりの長い休暇で、ゆっくり出来ましたでしょうか? しかし勤務医の先生や、発熱外来で休みなしの先生もいらっしゃいます。ご自愛頂きたいと思います。
例年なら年賀状作りに追われる時期でしたが、昨年を最後に卒賀状しました。正直な感想は・・・・ラク!すごく楽ですね~。忙しい時に結構な労力だったので、解放された気持ちです。まだ若い先生方はそうはいかないでしょうが、当たり前で行っていた風習?を変えてみるのも時にはいいものかも知れませんね。