本日のテーマをご覧になって、一体何を言いたいのかと疑問に思った方も多いかと想像します。事を効率的に速く成すには、普通は急ぎますよね? 最短距離を目指すのが世間の常識で、私も異論はありません。
しかしそうでない事も、実はこの世界にはあるのです。あるというよりも、そちらの方が正しいと思います。世界には逆説的な真理が結構あって、こういうところが実に面白い。実例を交えながら、この世にある意外な法則について探っていきましょう。
効率化社会の意外な問題点
現代社会は時間管理・マルチタスク・効率化が最優先。少ない時間でより大きな成果を挙げようと、皆が躍起になっています。それ自体は悪くないことだと思いますが、速さ・効率という概念を追い求めることが逆に効率・効果を落としている事って案外多いんですね。また効率を上げる手段が目的になってしまって、本末転倒になっている場合も多いのではないでしょうか?
トヨタに代表される自動車産業は「ジャストインタイム方式」という生産システムを採用しています。自社で製品や部品の在庫を持たず、”必要な時に必要なものを必要なだけ仕入れて作る”方式です。協力してくれる関連企業の整備が出来ているからこそ可能な仕組みで、平時は非常に効率的な方法なのは間違いありません。
しかし問題は地震などの突発的な出来事を想定していない事。今回のコロナや日本特有の震災などの有事には、この仕組みは脆い面を露呈しています。そして突発的事由が発生しない保証はありませんし、そういう意味では不完全な仕組だとも言えると思います。製造の分野はまさに効率主義ですので、他の産業も同じ弱点を抱えています。
また交通渋滞も社会的かつ経済的な問題ですが、ここでも効率化やスピードを求めすぎる弊害が現れています。渋滞の発生メカニズムも明らかにさえていて、たった1台のわずかな揺らぎが後続車に次々に伝播し渋滞の原因となります。誰もが時間に追われて、少しでも早く目的地に着きたい、着こうとしています。煽り運転にならないギリギリまで車間距離を詰めて、頻繁に車線変更をする名古屋走りも有名?ですね。
渋滞学でも車間距離40mを保てるかが渋滞になるかどうかのラインだと言われています。車間距離がそれ以上短くなると速度が落ちて、後ろの車に増幅して伝わります。その結果、十数台後ろの車を止めてしまうほどの渋滞を引き起こすそうです。
急いでいるからと車間を詰めれば詰めるほど、渋滞を引き起こす。皮肉なものですね。
ですので理論的には全てのドライバーが車間をきっちり保てば、結果的に全員が目的地に早く着きます。皮肉な結果ですが、科学にも証明されています。
また医療の世界で申し上げれば、救急医療も同様です。今回のコロナ感染で日本の病床数の構造が暴露されましたが、救急医療も現場に非常に負荷がかかっていました。平時は何とか回していましたが、有事には耐えられず崩壊した医療機関も多いと聞いています。
気持ち的にはよくわかりますが、自動車産業や医療と同じで速度という効率を目指し過ぎると実は効率を落としてしまうという結果になります。
実は効率的には、非効率なのかも知れない事実
このように効率や速度を求めれば求めるほど、逆に遅くなるという結果は日々の仕事の中にもたくさんありますね。
時間を有効活用しようとアポイント時間にギリギリで向かうと、間に合わないケースが多くありませんか?計算では間に合るはずなのに、不測の事態が起こる。渋滞にはまるなど。私は30分前には着くようにしていますが、30分早く出発すると道中も順調にいって、1時間前に着いてしまうことはザラでした。
またマルチタスクで業務をこなして効率的だと自負する方も多いですが、逆に効率が落ちるという科学的な検証もされています。しっかり一つ一つ向き合って解決いていくほうが実は早いという事。私も同感で一時マルチタスクで処理していましたが、結局終わる時間がかえって遅くなったり、間違いが増えることも多いという経験をしています。
全てを効率的に行っても、ちょっとしたアクシデントが発生すると崩れてしまい、その修復に多大な時間・コストがかかる。スピードを最優先しても、かえって遅くなる。まさに「急がば回れ」ではないでしょうか? 効率・スピードを否定するわけではありませんが、過度になりすぎねいようにしましょうという意味です。
そしてもうひとつ、私たちが気をつけなくてはならないことがあります。それは「立ち居振る舞い・所作(しょさ)」に関してです。忙しい、時間がない、急がないとという気持ちはよくわかりますが、気持ちが動作に出ていませんか?
自分の仕事が忙しくなり余裕がなくなると、途端に態度に出る人。また早く動けば早く終わる勘違いし、やたら焦ってバタバタする人。どちらも結果は明白で、仕事のパフォーマンスは落ちます。さらに周囲の同僚や、お客様にもイヤな印象を与えがち。
私は慌てていたり、バタバタした営業パーソンから商品を買いたいと決して思いません。余裕のなさ、もっと言えば能力の無さを見て下さいと言っているようなもの。たとえ死ぬほど忙しくても、余裕のよっちゃん?でいるべきでしょう。
まとめ
偉そうに申し上げる私も、自分の内面が仕事の姿勢に出た時期がありました。忙しいとピリピリした険しい顔になったり、早く次の仕事に進みたいという姿勢がアリアリ。想い出すと本当にバカ者でしたが、当時は気づかずお客様や周囲に悪い印象を与えたと思います。だからこそ皆さんには知ってほしい。
「なんでそんなに余裕なの?」。忙しくても、こう言われるくらいに行動するのです。こうすれば結果も良いものを引き寄せてきますよ。
世の中には、世間一般で信じられている常識とは違った「真理」のようなものが存在しています。今回ご紹介した「遠回りこそが、実は最も近道だった」という事実も、まさにそれだと思います。
最後までお読み頂き有難うございました。それでは、また来週お会いしましょう。