勤務医の現状

開業医に事務長って必要?

こんにちは、東海4県(愛知県、三重県、岐阜県、静岡県)を主エリアとして医業経営コンサルタントを営む「ブレイブワンコンサルティング」代表の岡本と申します。新規開業、経営改善コンサルティング、スタッフ問題のソリューションをご支援しています。

様々な開業医の悩みにフォーカスしていきますが、今日は「事務長の雇用の是非」についてお話致します。

開業医の業務の棚卸

開業しておられる先生には充分感じておられるので見て頂く必要はないと思いますが、開業前の先生にはご興味のあるところではないでしょうか? 平均的な開業医の1日をざっと見ていきましょう。

一般的には朝の診察開始は9時だと思います。中には早朝7時とか8時というスタート時間のクリニックもあると聞きますし、内視鏡などの検査を朝に設定している先もありますが、大部分は9時開始だと思います。

最近は住居と別という場合がほとんどだと思いますので、先生は7時30分頃~8時過ぎに出勤するのではないでしょうか。ビジネスにおいて朝のスタートは重要ですので、もっと早いという先生もいらっしゃいます。このあたりは科目や診療内容、性格や仕事への取組み方で様々ですね。

午前中に次々来院する外来診察を終えてようやく昼と思ったら、昼休みには健診や業者面談、両替えなどの業務が待っています。ようやく遅い昼食と休憩をしたらすぐに午後診の始まり。すでに10人以上患者さんが待っています。

午後19時過ぎ、ようやく終わったと思ったらスタッフから釣銭が合わないと言われ残業。一体何時に帰れることか・・・。

20時過ぎて業務終了。カルテの修正もやっと終わり帰路につこうと思ったら、スタッフから「先生、ちょっといいですか?」。

「え、まさか退職・・・?」

先生の鋭い勘は的中し、そのスタッフと10時過ぎまで面談。説得は失敗に終わり、明日からまた採用活動を再開しないといけない。

疲れた・・・

内容は違えど、大なり小なり開業医はあらゆる問題に対処しなければならないのです。流行れば流行るほど、とにかく忙しいのが開業医の実態です。

事務長の役割

このようにほぼほぼワンオペのような先生から、奥様やスタッフの協力をかなり得ている先生など様々。しかしどちらにしても、メインである診察は先生しか出来ませんし、あらゆるマネジメントの最終責任者でもあります。余程優れた信頼出来るスタッフや奥様の協力がないと、肉体的にも精神的にもボロボロになってしまう危険性をはらんでいるのです。

実際あまりの忙しさと、あまり得意ではないマネジメント業務に追いまくられて、開業後5年~10年でリタイヤしたい・・・と仰る先生もたくさんみえます。

さらに近年クリニックにまつわるいろんなことが、昔と比べて多様化かつ複雑化しています。診療に関係するシステム系の仕組みはここ5年~10年でさらに高度化するでしょうし、雇用問題も医療系には結構難しくなってきています。労働環境も労働側が権利をさらに主張する社会になるでしょう。

今までなら何とか出来たことも、今後はそうはいかなくなる。院長に代わってバックで動ける人材が必要になる時代です。

そんなピンチの時に、先生の右腕になりクリニックを共に支えてくれる人がいたら、こんな心強い事はありません。それが事務長ですね。

「コンサルタントとどう違うの?」

こんな疑問も浮かぶと思いますが、簡単に言えば「内包化したコンサルタント」でしょうか。外部コンサルタントは通常は月に何回か会い、あとはメールや電話などで相談するという形が一般的。しかし事務長はスタッフの一員としてクリニックの為に働きます。便利屋、雑務係とも言えますが、いるとすごく助かる職種だと思います。

「だけど人件費はある程度かかるよね?」

先生の右腕となりクリニックの為に働くスタッフですので、当然報酬は必要。しかも事務スタッフさんよりは高い報酬が。でも考えて下さい、私たちコンサルタントの月次報酬も同様ですが、経営に携わり院長をフォローする人材ですよ、安く使おうという気持ちでは到底良いクリニックにしようなど無理です。

医業経営の会計はよ~く知っていますので、非常に安い投資だとご理解下さい。

ここまでお話しても「開業医には必要ない」と考える先生も多いので、残念ながらご自由にという他ありませんが・・・。

しっかりソロバンはじけば、費用対効果は明らかです。

事務長を雇用するなら、こんな先生です

ここまでお話しても事務長採用をお勧めする理由にまだ反発する方もみえると思いますので(苦笑)、具体的に必要なケースを考えてみましょう。

事務長の能力や経験によりますが、院長秘書的な役割、経営的な業務の遂行、外部交渉、スタッフマネジメント、web管理などを代行してくれます。人選を誤らなければ、先生は診療に専念出来ると断言出来ます。

「でもたかだが一軒で診療しているだけなので、お金を払って雇わなくても何とかなるのでは?」

一理ありますし、1軒のクリニックを普通に管理するだけなら、大変だけど無理ではないと思います。事務長を雇用した方が良い先生は下記のケースになります。

分院展開を考えている先生

1軒目が成功し、さらに収益増を狙うケース。1軒ならまだしも、複数院になりますと管理事項や医師、スタッフも比例して増えますので是非考えて頂きたい。

実際に分院展開をしている先生方にお聞きしますと、ほぼ例外なく「必須」だと答えられます。

医師を複数雇用し、さらなる収益増を目指す先生

分院展開のような横展開はしないが、医師を増やして1軒の収益を上げるという縦展開を考える先生にも同様の理由で事務長は必須と考えます。

診療だけに専念したい先生

縦も横展開も考えていないけど、どうにもスタッフマネジメントや雑務はしたくない、診療のみに専念したいと思う先生も雇用を考えると良いと思います。

良いクリニックを目指す先生

上の3つとは異なり、更なる収益増加や苦手だから人に任せるのではなく、もっともっと良いクリニックにしたいから優れた人材を招きたい場合です。

患者さんにもっと利用しやすく待ち時間も少ないクリニック作り、スタッフが働きやすい環境作りなど動機は様々ですが、現状打破していくには自分だけでは無理で、専門知識やスキルを持つ優秀な外部の人材を雇用する(契約する)事は重要。

結果的にこういうクリニックは多くの方に支持されて、規模拡大になるかも知れませんが、それはあくまで結果。こういう先生は是非応援したいですね。

まとめ

本日は「事務長雇用の是非」について、お話してきました。いかがだったでしょうか?

多忙な開業医の先生ですのでそれすらも考える時間がなかったり、どのように募集すれば良いかなども不安ですね。最近はパートタイム事務長という新しい業態も出てきていますので、気軽に事務長を雇える環境にもなってきています。

こんなケースでもご相談頂ければ、何かのお役に立てるかも知れません。お気軽にメールでご相談下さい。

それでは、また次号で!


編集後記

週何回かのパート勤務と、がっつりお願いしたい時の通常勤務の組み合わせなんかも面白いかも。外部コンサルをやっていますと、やはりずっといる内部スタッフに叶わないと思うことがあります。苦楽を共にし、困難を共に乗り越える!という経験がよりしやすいからでしょうね。

何年後かに当たり前の姿になっていると嬉しいです。

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