マネジメント方法

患者ではなく、スタッフ満足度を最大にすれば・・・

こんにちは、東海地区を拠点に「より良いクリニックを100軒作るプロジェクト」に取り組む、ブレイブワンコンサルティング代表の岡本です。
「より良い」とは抽象的で恐縮ですが、患者さんを第一に、先進的な仕組みを持つ地域貢献型クリニックをイメージしています。

医療マーケティングを推奨・実践する身ですので、当然ながら「患者さん第一!」は基本中の基本です。しかし、先日あるクリニックさんとご縁があり、こういうスタンスもありだなと感じましたのでご紹介したいと思います。

患者さんより、スタッフを大切にするクリニック?

当クリニックさんは愛知県で開業する内科クリニックさんで、非常に流行っています。そして面白いのは、クリニック理念は「CS(患者満足度)より、ES(スタッフ満足度)」と公言している点です。

当ブログでも何度も申し上げている通り、クリニックにおけるスタッフさんの重要性は今更言うまでもありません。いくら院長が頑張っても一人で出来ることには限界がありますから。読者の先生方には申し上げるまでもないことでしょう。

しかしこのクリニックさんは、スタッフの満足度を最大にすることがクリニックの利益になり、患者さんの為になると仰ってみえます。確かにその通りだと思いますが、順番が・・・と思う気持ちもありましたが、話していく中で疑問は解消されました。そのあたりをお話し致します。

このクリニックさんのスタッフ満足度を高める方法は、給料をたくさん出すという単純な方法ではありません。確かに給料は多いに越したことはありませんが、ある程度経つと慣れてきます。そのうちの昇給がないとか、手当が少ないとか違う文句が出てくるものです。

待遇面の手厚い支給も欠かす事の出来ない要素ではありますが、もっと次元の違うモチベーションアップをする方法があります。

それが自己成長の機会を与えるということです。

具体的に申しますと、

当クリニックさんは様々な院内の取り組み、患者さん対応などを外部の方へ情報発信しています。発信方法は自院のホームページなどのオフィシャルサイトや、リアルな講演会、勉強会などです。今ではスタッフさんに外部講師の依頼が来るほどだそうです。

また自己成長を図ってもらう為に、院内には様々なカテゴリーの書籍の貸し出し制度もあり、定期的に勉強会・発表会も開かれています。院長が出席する医師の経営セミナーにもスタッフさんが随行します。なかなか出来るものではありませんし、嫌がらずないスタッフさんにも驚きます。

あるスタッフさんに尋ねてみました。

「入職した頃はまったく普通の女性でした。定時に出社し、仕事が終わったら帰宅する。人前で講師を務めるなんてとんでもない。それがここでいろいろな事を学ぶうちにいつのまにか私ってスゴイ?と思うようになりました。院長との随行や人前で話すことは最初はすごい抵抗がありましたが、私たちに成長してほしいという院長の想い、自分が少しづつ成長していく楽しさを感じ出してからは全く問題ありません。もっと成長しtていきたいと感じています」

なるほど、すごいですね。

もちろんスタッフさんの資質を見極める採用のスキル、スタッフさん自身の努力もあったでしょうが、それにもまして院長先生の想いと行動力、そして人間性があったのは言うまでもないでしょう。

いくら院長の理想が高くても、ついていきたいと思わせる何かがないとスタッフはついてきません。また院長が何か言っているわ~と言われるのがオチ。

このクリニックさんも決して順風満帆であったわけではありません。過去に大変な想いもされたと聞いておりますが、そのようなご苦労があったからこそ今があるのでしょう。人は痛みを経験しないと変われないものです。

スタッフを大事にするという企業は数多くありますが、実際に行動に現わしている企業はそれほどないと思います。しかし当クリニックさんは本当の意味でスタッフ第一主義を貫いています。

スタッフを大切にするとどうなるか?

人間は自己中心的な生き物です。しかし自己保存本能というDNAに刻まれたものですので、どうしようもありません。まれに自己を犠牲にしても他者を助けようとする方もいますが、なかなか真似が出来るものではないでしょう。

でも生活が満たされて、自分が誰かに大切にされて自己承認欲求が満たされれば、次に起こることは何だと思いますか?

それは「他者に貢献したいという欲求」です。誰かを助けたい、誰かの役に立ちたい、自分と同じようにしてあげたいと。自分がある程度満たされて初めて、他者に目が向くものです。自分の生活が苦しかったり、自分を認めてもらっていないと優しくは出来ませんよね。

このクリニックのように、スタッフは宝だ!と自他共に認める組織であるなら、スタッフの目は自分から患者さんに移ります。毎日来院する患者さんの役に立てないかと考えて行動しようとするのではないでしょうか?

院長からあれやこれやと指図されなくても、自ら患者さんの為に何が出来るかを考えて、相談して、行動するでしょう。これこそが医療マーケティングの始まりであり、患者さんの為に行動になると思います。

私は医療機関にお伺いする時、入口を入った時の印象を非常に大切にしています。

入口の自動ドアが開いて受付へいくまで、受付の方の印象や言動と態度などを観察します。最近は様付けをするクリニックのありますが、そういう表面的な話ではなく、本質的に感じる印象ですね。

当クリニックさんに伺う時も、何か課題を見つけてやろうという意地悪な気持ちで行きました(笑)。しかし玄関口での検温時に企みは吹き飛ばされました~。何というか、優しい、ふんわりとした印象で、緊張が解きほぐされる感じでした。

院内に入ってからもそれは変わらず、スタッフの方全員が優しくて素晴らしいクリニックという印象です。患者さんへの対応も拝見させてもらいましたが、最初の印象と変わらない”優しさ”を感じましたし、患者さんの質問や世間話などのコミュニケーションも非常に良かったと思います。

そういう意味も含めて、院長先生の考えと行動は間違っておらず、高い効果を出しています。

まとめ

本日は「スタッフを大切にするクリニック」の事例から、患者さん第一のクリニックになる為のヒントをお伝えしました。いかがだったでしょうか?

私は患者さんとスタッフが同一線上におき、どちらも大事に、とアドバイスさせてもらっていますが、当クリニックさんのような考え方もあると再認識させられました。本質的な考え方は同じだと思いますが、スタッフに与える印象はまた違ったものになりますね。

私も当社のスタッフには常日頃伝えているつもりですが、今回の経験を活かしてもう少しうまく伝えます。先生も是非試して頂きたいと思います。

それでは、また次週お会いできるのを楽しみにしております。

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