マネジメント方法

医師のためのチューニング講座

不機嫌な医師

こんにちは、東海地方(愛知県、三重県、岐阜県、静岡県)を主エリアとして、医業経営のお手伝いを行う「ブレイブワンコンサルティング」代表の岡本と申します。

医業経営のお悩み、新規開業時のノウハウ、スタッフマネジメントのやり方、そして医師のより良い人生のメンターを生業としています。開業前で不安な先生、開業したものの医業経営、マネジメント業務が上手くいかない先生のお悩みを解決するお手伝いをしております。個人で行っていますので知名度は高くありませんが、仕事には誇りと自信を持っています。メールなどでお気軽にご相談下さい。

本日も身の覚えのある医師にとっては耳の痛いお話、スタッフとの関わり合い方についてお話させて頂きます。ご興味ある方は最後までお付き合い頂けますと幸いです。

院長とスタッフの軋轢

「患者さんの為のクリニックであり、理念を全うする為に患者さん第一で今日も頑張りましょう」

「待ち時間をいかに減らすか、他人事ではなく全員で考えよう!」

「患者さんには親切にしないと!」

こんな話を、院長先生が朝礼などで何度も何度もお話しているのではないでしょうか?

院長の想いと、スタッフの考えとは合致しない事の方が多いので悩みは尽きないんですね。どうしたらスタッフに浸透させる事が出来るのか、クリニック経営の最大の課題と言っても過言ではないでしょう。

しかし先生、あなたは重大な事実を見逃している事をご存知ですか?

この事実を自身で認識出来ない限り、永遠にスタッフマネジメントに関する悩みはなくならないのです。

医師が陥りがちなミス

それでは院長のやりがちな失敗を、例を挙げてご説明していきます(実際にあった事例です)。

事例1

患者さんの待ち時間短縮をテーマに全員で取り組むクリニック。何事にも時間感覚を研ぎ澄ますようにと仰る院長だが、自分には甘く、診療開始時間にはいつも5分以上遅れるし、その日の気分で患者さんと必要以上に話し込む傾向が強く、待ち時間増大のボトルネックになっている。

解説

ありがちなケースで、言行不一致のわかりやすい例だと思います。スタッフは院長の言葉よりも行動を見ており、自身で体現出来ないような綺麗ごとをいくら並べても誰も言う事を聞きませんね。言行一致を常に意識し、範を示すことが大切です。

事例2

スタッフの前では「スタッフこそが私の宝だよ!」と持ち上げるが、何かの拍子で突然怒り出してスタッフに当たり散らす院長。スタッフ間では裸の王様、北の偉い人(笑)、サイコパスと噂されている。早く抜け出そうと就活に精を出すスタッフたち・・・

解説

これも非常に多い事例で、スタッフ大量辞職になるケースの大半の責任が院長先生です。医師は社会の荒波に揉まれていないのは事実ですし、マネジメント業務を経験していない場合がほとんど。

何よりも一番致命的なのは、

「自分の言動・行動の至らないところを認識出来ていない」という事。今までそうやってきたのに何が悪いの?と考えているのかも知れませんが、これでは経営者としては失格と言わざる得ません。常に相手の立場に立って考えることが非常に重要だと思います。

マインドチューニングとは?

医師を顧客とする仕事をしているのに、こんな厳しい事を書いて大丈夫?と友人に言われますが、医療の主役たる医師を全力サポートする仕事に天命を感じているからこそ、こんな話をしています。一部?の医師に良くなってほしいからこそですので、ご容赦下さい。

話を戻しますが、こういうケースでどうやれば改善出来るのかを考えてみましょう。

目的は医師のマインドをリセットして、スタッフとの心的距離を縮めてクリニックのパワーに変えていく、患者さんに良い医療や応対を提供することだと思います。ですのでボトルネックである”医師”を調律(チューニング)する必要があります。

最も大事な事は、院長先生ご自身で気づくことが出来るかどうか?です。そして心から反省して、リセット出来るかどうかにかかっています。

誰しもがそうですが、自分の欠点を治すことは口で言うほど簡単ではありません。幼少期からの長い生活の中で身についたものですので、治すことは不可能かも知れません。しかしこのままでは決して上手くいきませんし、スタッフと一緒になってクリニックの理念を達成するという崇高な目標には到底届かないのです。

こういう場合に様々なマインドセットの方法がありますので、ぜひお試し頂きたいのですが、ここではマインドチューニングという比較的簡単な方法をご紹介しましょう。

マインドチューニングとは、完全に変えることの出来ない自身の性格を、楽器のチューニングのようになるべく周囲にあわせるように調整していくこと。誰もが日常生活の中で行っていることですが、意識的にマネジメントに用いる手法です。

チューニングを正しく行うのに必要な事を、いくつか書き出してみましょう。

1.自分の言動が周囲に与える影響の大きさを知ること

クリニック内ではトップですし、人事権を持つわけですので誰もが逆らえません。勤務医になりたての頃の気持ちを思い出して下さい。先輩や院長の存在が怖かったのではないでしょうか?

軽はずみな言動・行動は慎み、自分の言ったことに責任を持ちましょう。

2.良き相談役を持つ

自分の言動・行動に注意を払うと言っても、今まで出来ていなかったわけですので簡単ではありません。一時は出来ても、すぐに元に戻ってしまうケースも多いもの。

院長先生の周囲にいる信頼出来る人に、自身のチェック役も含めて相談出来る人をぜひ見つけてほしいと思います。奥様でも結構ですし、友人、場合によってはスタッフでもいいでしょう。客観的かつ率直に評価してくれる人材を確保することをお勧めします。

相談役は別に人間でなくても大丈夫。私は書籍を師としており、事あるごとに本を読み、己の行動を戒めています。

3.自分ではなく、相手の為になる事をすると決める

自分が一番大切であることに異論はありませんが、実はこの考えでは真の成功を手にすることは出来ません。

自分の利益や幸せを追い求めれば求めるほど、成功や幸せは逃げていくのです。心理学では幸福のパラドックスなどと呼ばれていますが、意味を理解すると思い当たることばかりのはず。

私も営業マン時代、自分の売上とかノルマの為に仕事をしていた時期がありました。営業マンだから当たり前なんですが、こういう時は一時は上手くいっても長続きはしません。そりゃそうですよね、お客さんも利益を得たいのに、そんな営業マンから買いたい!と思えるはずがない。

長い時間がかかりましたが、ある時ようやくこう思える時が来ました。

「もう自分の利益はいい。お客さんの為に、お客さんの笑顔を見る為に仕事を全力でしよう!」

その後の話は予想出来ると思いますが、徐々に成績は上向き、気がつけば優秀営業マンになっていました。お客さんからは絶大な信頼を得ることが出来て(お客さんの利益獲得に全力で取り組む人間を嫌いになるわけがない!)安定した仕事が出来るようになりました。

結果もそうですが、何より仕事が楽しくなったことが今でも忘れることが出来ません。

自分ではなく他人の事を想うこと。これこそが成功する真の秘訣だと考えます。

いかがでしょうか? チューニングって一体どんなことをするのだろうと思って読まれた方には申し訳ないですが、非常に簡単な話です。騙されたと思って、ぜひ行って欲しいと思います。

まとめ

本日は「医師のマインドチューニング」と題して、スタッフマネジメントのコツをお話させて頂きました。いかがだったでしょうか?

厳しい話、あまり聞きたくないお話になりましたが、クリニックで頻発している事例です。他人事ではなく自分事として捉えて頂き、改善していってほしいと考えます。

「これって、俺のこと・・・」

こう思って頂いた方は改善出来る余地ありです。地域で支持される素晴らしいクリニックになって頂く為にも、真摯に経営に取り組んで欲しいと思います。

それでは、また次号で。


編集後記

「人生に無駄なことは、ひとつもない」

「人生で起こることに、良い悪いはない。すべては自分の受け取り方次第で良いにの悪いにもなる」

これは私がいつも自身に言い聞かせている言葉で、この言葉のおかげで今まであった様々な嫌な事や辛い事に対して、前向きに向き合ってこられたと感謝しています。

開業した先生方も、今後様々な試練が待ち受けているかも知れません。でも安心して下さい、全ては自身の受け取り方次第で無駄なことはないのですから。

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