クリニック経営は、交渉の連続
業者さんとの交渉は苦手なので、できればしたくないわ。でも交渉しないと言い値でもってこられるし。
困った・・・誰か信頼できる交渉役っていないのかなあ。
クリニック経営はもちろん、生れ落ちてから人生はまさに交渉の連続です。
この世に生まれてから、まずは母親との関係作り。本能的に保護されるようにはなっていますが、もし母親から見放されたら生死に関わります。ですので、本能的に必死で?可愛さをアピールします。また成長してからも、学校、仕事、その他様々なことは全て交渉で成り立っていると言っても過言ではない。
そして勤務医から独立する時、新規開業するまでの過程、開業後の経営に至るまで、業者やスタッフ、患者さんなど、先生を取り巻く方々と何がしかの交渉をしています。ここで上手く交渉と契約が出来ないと、経営や運営などが上手く機能しなくなります。
突き詰めて申し上げれば、自分の思い描くような成果を出すには「他人と上手く協調しながら自分・組織の利益を得る」事が必須です。交渉が苦手と言っていては、欲しいものが手に入らないのです。
このページでは、長年営業職として交渉に携わってきた私が「必ず成果の出る、WINWIN交渉術」についてお話させて頂きます。
交渉の目的とは?
前項で、人生は交渉次第というお話をさせて頂きました。厳しく聞こえたかも知れませんが、厳然たる事実。
それでは新規開業や継承など、サラリーマンから独立を目指す時に行う交渉の目的は、何か?
それは自分の成し遂げたいことや欲しいものを手に入れる為ですね。価格を安くして欲しいから値切り交渉をする。自分の思い描いた経営・運営をしたいから、スタッフに指示する。自分の要求を相手に提示して、叶える為だと思います。
しかし、通常はこのシンプルな要求はそう簡単には実現しません。なぜなら自分の要求と、相手の要求は一致しないから。買う側は少しでも安く手に入れたいのに、売り手は1円でも高く売りたい。相反する願望、欲望とがぶつかり合うのですから、そう簡単にはいかないのが普通ですね。でも現実は自分の要求を上手く通したり、思うように交渉をする人がいます。この違いは何なのか、というところがポイントです。
交渉という言葉を調べると「互いに異なる要求を、合意に到達することを目指して討議すること」と書かれています。つまり自分の要求だけを通そうとするのではなく、相手の要求も聞き入れて互いに納得のいく妥協点を探す作業のことです。
自分は30%値引きして欲しい。しかし相手は20%までしか無理だという。ならば25%でどうでしょう、わかりましたと互いに納得することですね。ここを理解せずに自分の要求だけを何としてでも通そうとすれば、交渉決裂し結局は欲しいものを得ることが出来なくなるのです。
割合は別としてWINWINの関係を構築出来なければ、継続した交渉は成り立たないでしょう。率直に申し上げて今まで相手が折れてきた経験の多い医師は、自分の要求が全て通ると思っていることが多いです。勘違いしやすいので、気をつけなくてはなりません。
必ず成果の出る交渉方法
ポイント
さあ実践編です。交渉の本質(妥協点を模索しつつ、自分に有利な落としどころを探す)を知り、短期・長期戦略で交渉します。
それでは、基本的な交渉方法をご紹介します。ここでは医療機器の購入交渉を例にします。
1.基本の① 基礎情報を事前に充分収集しておく
誰もが欲しいモノがあれば、いろいろな媒体から情報収集しますよね。書物、Google、口コミ、SNS、使用している医師など、その気になればかなりの情報を事前に集めることが出来ます。様々な媒体情報を統合して、自分なりの尺度をしっかり持っておくことが大事ですね。
2.基本の② 最終ゴールを描いておく
情報収集が終わると当初のイメージと異なってくる場合もあるでしょう。漠然としていた欲しいモノが、情報収集→統合により具体化してくるからです。その上で、ご自身が決めておいて欲しいことがあります。
・この機器を使う目的(どんな診断、治療をするために使うのかなど)を今一度、しっかり確定しておきましょう。
・機器を購入することで得られるメリット、失うデメリットなども列記し落とし込む。
・総合的に検討し、メーカー、機種、グレードなどをある程度絞り込んでおく。
・その機種をどんな条件で買いたいか、決めておく。
最終ゴールがわかっていて交渉するのと、そうでない場合の交渉では結果が大きく変わってきますので、面倒がらずに行いましょうね。
3.基本の③ 交渉の過程を、予めシミュレーションしておく。
ここまではなかなか実行しないでしょうが、事前に考えたゴールに到達できるよう交渉過程を想像してみるのです。
相手も自分の要求を通したいのですから、当然自分の思うようには進まないことが多いです。こう来たらこう返す、またこう来たらこう返すみたいな。シミュレーション通りにはいきませんが、いくつか手を考えておくと慌てなくて良いと思います。交渉の勢いに飲まれてしまう、あれを言っておくのを忘れたとか、後悔することがなくなります。
4.基本の④ 時にはテーブルを立つ勇気も必要
交渉過程でどうしても思うように進まない、絶対確保したいライン(価格、グレード、納期など)を割り込んできた場合、何とかしないとズルズルと押されてしまいます。こういう時は、決裂覚悟で席を立つ、交渉を打ち切るのも手です。
相手の医療機器メーカーも当然ですが、機器を販売したいですよね。特にノルマ達成に追われている場合は、席を立たれては困るのです。
「わかった。この話はなかったことにしましょう。他のメーカーを当たります」
「え・・・待って下さい、わかりました。先生のおっしゃった条件をのみます」
こういう交渉の場面も多いことをお知り下さい。ただ何でもかんでもというわけではなく、交渉の状況、相手の心理をよく読まないと、終了してしまいますので・・・
5.基本の⑤ その他注意しておくこと
・例えば価格交渉において、自分的に納得できるライン(例えば30%引き)まで値引きしてもらえたら大満足ですね。でも実は30%はまあまあの線で、最近は競合が出現してきたので40%まで値引きしているかも知れません。情報は常に変化しますので、妙にすんなり進んだら軌道修正もありです。
・業者さんも利益を出さないと仕事になりません。あまりに強引に交渉を進めると、WIINのみになってしまいます。営業マンも人間です、そんな子お客よりある程度利益を頂けるお客さんを大事にするのは人情ですよね。あくまで相互利益が大切ですので、砂漠トビバッタの如き交渉は結局得にならないケースもあります。
・そして最後にもうひとつ付け加えておきましょう。それは”あまり勝ちすぎないこと”。いつもいつも限界を超えるような要求を通していると、業者さんが癖の悪い、安い客相手の対応になってしまうということです。上の項目と似ていますが、アフターケアに影響が出たりしますので、たまにはワザと負けてあげたり言い値で購入してあげることも大切です。長期的に考えて、良い交渉をしましょう。
まとめ
いかがでしょうか?おそらく先生方はあまり交渉に関わってこなかったかと思いますので、押しと引きの阿吽のニュアンスがわかにくいかも知れません。独立を考えるなら否が応でも取り組まなくてはならない部分ですので、参考にして下さい。
私も営業職を長くやっていましたので、多くの交渉経験をさせて頂きました。上手くいったケース、やられたなあ・・・と後悔する商談、交渉し過ぎて相手を追い込みすぎたケースなど、成功と失敗をたくさん経験してきました。人間相手ですので絶対法則はありませんが、楽しみながら勉強していく姿勢が大切なのではと考えます。
冒頭にも書きましたが、まさに人生は交渉の連続。仕事はもちろん、学業、恋愛、結婚生活、教育などあらゆる場面で交渉力は活かせると確信しています(結婚生活は我慢の連続で、負けっぱなしですが・・・)。
場数を踏むことが大事ですので、いろいろ経験をされることをお勧め致します。とはいえ、ご自身だけで交渉するのはご心配な先生は弊社が代行交渉致しますのでご安心下さい。