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医師との接点に悩む薬局
当サイトにも「業者マッチング」の中に、調剤薬局様の事を書かせて頂いています。しかしこれは医師側から見た視点ですので、少し一方通行的な話になっています。
最近薬局の経営者から「医師との接点」について相談を受けました。接点とは、
- 未分業の医師の処方箋を応需したいが、接点を持つ方法を知らない。
- 接点を持てたとしても、どう進めていけばいいのかわからない。
- 銀行や税理士、医薬品卸にコネがなく、取り合ってもらえない。
- 処方箋は応需しているが、医師との会話が上手く出来ない。
- そもそも医師との付き合い方がわからない。
等々、薬局側からの悩みや課題を聞きました。確かに医師との接点は一般の業種に比べて非常に少ないのが現実、誰かにマッチングしてもらわないと永遠に知り合えないかも知れません。そういうお悩みを知ってしまったからには見過ごしてはおけませんので、ご存知の事かも知れませんが、改めてお話させて頂きます。
医師を知る
このサイトの読者は、大半が医師の方だと推察します。そういう読者層を知りながら、あえて医師とは?という事について記事にするのはビジネス的にどうかと思う気も正直ありますが、医師にもはっきり間違っている事は間違っていると申すのが、私の仕事の仕方ですのでご容赦下さい。
基本的に一般社会の常識に疎いと思います。医師を目指して勉強を続け、病院という特殊な環境下で育ち、そのまま開業するわけですので、ある意味で仕方ないですね。もちろん全員がそうではないですし、素晴らしい人間性を持つ方もたくさんいらっしゃいます。あくまで基本的にという意味ですので、誤解なきようにお願いします。
さらにビジネス的な知識や経験はほぼ無く、組織のルールなどもあまり詳しくはない。会社勤めをしていたなら当然知っているであろう事や、ビジネス的な慣習を変に期待しない方が良いと思います。
またプライドが高く、他の人より優れていると認識していますので、そこも知っておくべきです。病院勤めの時は組織にいますので、まだ理解出来ても、開業すると誰も注意する人がいません。たまにですが、独裁者になる危険性もあります。
自社の目指すところを明確にする
医師がどのようなものかを、改めて知って頂いたかと思います。
次は自社の事になりますが、経営方針・目標を一度自問して頂きたい。
「この先5年間で10店舗にし、年商〇〇億円を目指す!」
「マンツーマンは危険なので、モール型展開に変換する!」
「我が社は規模の拡大を目指すのではなく、一軒一軒医師との関係を盤石にし地域に貢献する」
等々、具体的に戦略を立案して頂きたい。己の立ち位置と目指す点が明確にする事で、どのような医師と協力してやっていくのかが明確になるでしょう。
時間的な指標、数値的な指標、自分の感情、スタッフの満足度など細かく具体的に検討します。具体的であればあるほど、実現の可能性が高まりますので手を抜かず立案することをお勧めします。
ここまで実践できれば、自ずと求める医師像、科目、クリニック像も明確になります。もちろん計画通りにいかない場合もありますし、ご縁を頂いた先生と上手くいく場合もあります。ただ最低限の備えは必要だと思います。
接点を見つける方法
まずは医師が薬局との接点を考えるパターンをご紹介します。
新規開業の場合
病院勤務の医師が新規開業をしようとする場合、最初に相談するのは一般的に銀行、不動産関係、医薬品卸が多いと思います。
結論的を先に申せば、銀行や不動産業者、医薬品卸等とコネクションを持つことが有効な手段となります。現在では新規開業する医師はほぼ全員が医薬分業を希望するはずですので、優先順位を少し後になりますが薬局探しをします。
都会は別として、地域毎に医療に強い、熱心に取り組んでいる銀行がありますので、そことコネクションを作ることが大切です。
不動産系は一般の方はあまり馴染みがなく、関係作りには苦労するかも知れません。独特なルールもあるようですので、後述する医薬品卸をハブにするのも良いかと思います。
そして医薬品卸ですが、今日本では90%以上をメガ卸4社が占めています。アルフレッサ、メディセオ、スズケン、東邦で、おそらく薬局様も取引はあるはずですので、新規出店したい旨を伝えて紹介してもらう事を考えましょう。
但し卸も何十軒もの薬局からすでに依頼されています。圧倒的に売り手市場ですから、卸側は重要な薬局に紹介します。本社から指示のある薬局、経営の良好な薬局、売上の大きい薬局、利益率の良い薬局、誠実な薬局、卸に協力的な薬局等々。これらの観点から薬局を選別していますので、紹介したい薬局であることが最重要課題となります。
紹介をもらうルートは複数ですが、銀行と卸もタイアップしており一番重要で情報の多いルートが卸経由です。日頃の取引をよく振り返ってみて、紹介に値する薬局になることが重要です。
結論は、卸とタイアップが有力な手段です!
開業後の医師
すでに開業しているが事情があり未分業、そろそろ分業したいというケースです。
当然ながら相手の見極め(採算がとれるかどうか)は大事です。医療機関情報はすぐにわかりますので、事前調査を入念にしましょう。患者数はもちろんですが、周辺情報、競合情報などもしっかり下調べしておきます。地域の開発で、人流がすっかり変わってしまうこともあり得ますので。
肝心の情報源ですが、開業後の場合は医薬品卸に相談する場合がほとんどだと思います。懇意にしている卸に相談するパターンが大半ですので、ここでも言えるのは卸との日頃の関係になります。お互いが良いパートナーとなれるよう、日頃の取引からしっかり配慮していきましょう。
調剤薬局の行く末
厚生労働省の調剤薬局への締め付けが始まっています。
薬局経営者の方は当然ご承知ですので詳細は割愛しますが、すでにマンツーマン薬局は成り立たない時代になってきました。実際地方エリアで患者数がある程度見込めるクリニックでも、将来的に複数クリニック誘致が出来ない場所なら応需を見合わせる薬局が増えてきました。
厚生労働省の求める薬局と現実との乖離を、政策によって解決しようとしています。大手、零細を合わせてコンビニより多いと言われる薬局(この数値を公表し出した時から危ない?)を半分以下にすると公言しています。
以前のように医療機関の薬局を外に出しただけの薬局、調剤する事しか考えていない薬局は最早必要がないのでしょう。可能かどうかは別として、地域の健康の相談窓口というポジションを確立しないと存続の危機ということです。
社会保障費を糧としている以上、国の政策に沿わない経営は成り立ちません。政策に沿いつつ、経営内容をアップさせていくしかないのです。しかしそういう時代でも、処方を応需する仕組みが必須なのが薬局のビジネスモデル。応需するクリニックを選ぶ時代になっています。
医薬品卸との関わり方
文中にも何度も登場する医薬品卸。薬局関係者の方は何らかの関りはあると思いますが、「医師との接点作り」には必須のパートナーです。
第二項でも触れましたが、医師情報が欲しければ卸との関り方には配慮が必要です。
こことタイアップしたいと思う卸との取引はどうなっているか? 取引条件次第だと思いますが、相手を大事にしない人間は相手から大事されません。価格が一円でも安い卸から買う、急配に応じる卸から買いたい気持ちはわかりますが、大きな見地から再考するのも必要。後から得られる利益を試算しながら、取引を検討しましょう。
それだけでは弱いのが現実。紹介希望の薬局はごまんとありますので、その中で選んで頂かなくてはなりません。地域で文句なしに売上げの大きい薬局ならいいのですが、もしそうでない場合はこんなことに配慮すると宜しいかなと思います。
人間は仕事の仕方で人間性が現れます。買い方、値段の交渉の仕方、支払い方等々。この全てのプロセスにおいて誠実に取引し、良い人間関係を構築します。当たり前なんですが結構やっていない経営者が多く、特に現場の責任者やスタッフにもしっかり浸透させなくてはなりません。組織として誠実につき合うべきですね。
経験上申しますが、イヤな医師や薬局経営者、薬剤師には慣れています。顔では笑って処理しますが、絶対に分業案件は紹介しないと心に誓います(笑)。良い人で尊敬出来ると思えば、会社の指示に反して情報を流したり、上司に猛プッシュします。
取引云々も大事ですが、結局のところは人間対人間になると思います。この話を忘れないようにして欲しいです。
これからどうしていくか?
さてそれでは今後どう展開していくかを考えてみましょう。
何度も申し上げますが、自社の財務状況を踏まえて今後の経営方針を定める事、そしてどのようなスタンスで事業展開していくかを明確にする事は必ずお願いします。
その上で店舗数を拡大していくのか、そうではなくて既存店で続けていくのかを踏まえて、今後の出店を検討しましょう。ただ政府の政策を無視しては減益リスクからは逃れられませんので、否が応でも沿っていく事です。
患者さんに支持される医療機関の処方箋を応需しつつ、それだけに頼らずにかかりつけ薬局として支持されなくてはなりません。収益もOTCや他の商材を扱う必要があります。ちなみにOTCはドラッグストアに叶いませんので、新たな収益商材・サービスという意味です。地域に拘らない戦略もございます。
地域の患者さんが何を求めているのか、自社がターゲットとするお客さんが何を欲しているのかを真剣に考える事が大切だと感じます。
医師と共に地域医療を支えていって頂きたい、重要なポジションを担っておられます。国が薬局に抱くビジョンを念頭に、良いパートナーを探していきましょう。