現状と課題
初めまして。このページをご覧になっているという事は、あなたは税理士、弁護士、社会労務士さんのいずれかだと推察します。
弁護士を除き、医療機関とは関わりが深い職種です(弁護士はトラブル時に依頼するのが一般的かと思いますので)。
私も顧客としてお世話になっていますし、税務や労務は専門知識と経験が必要で、素人では難しい領域です。
しかしながら、医療機関や薬局さんとの関わり合い方を傍で見てきた経験から申し上げると、大変失礼ですがどうも顧客の真のニーズの解決に踏み込んでいない気がして仕方がないのです。もっとはっきり言えば、あえて踏み込まないの方が正しい気がします。
税理士、社労士さんは非常に優秀な方が多く、ご自身の業務に関しては口をはさむことはありません。特に医療機関を顧客に持った経験が多いところは、特殊な医療税務にも豊富な知識をお持ちですし、税務対策においても問題はないと思います。また顧客が多くて、すでに手一杯なのが現状なのかも知れません。
ただ顧客である医師側が、完全に満足しているケースが意外に少ないように感じます。これはおかしな話で、基本的な職務はきちんと果たしていらっしゃるはずなのに、何故かと不思議な気持ちになったものです。
私なりに第3者目線で観察した結果、思い当たる点がありました。それは、
顧客の真のニーズを把握出来ていない、自分事にして対処していない
という事でした。
「そんな事はない!決算時も医師と面談して税務指導をしている。要望があれば、その都度相談にも乗っているし」
大変失礼な事を申しているのは承知していますが、しかしこれが前職時代からずっと聞いてきた医師の本音でした。もちろん税務指導・労務指導は完璧でしょうし、それ以上は費用次第なのかも知れません。実際に院長から経営はもちろん、スタッフ問題などの相談を受けていると思います。
問題は「そこからどうしたか?」という点ではないでしょうか?
医師の求めるものは?
それでは顧客である医師が一体何を求めているのか? この点を考えていきましょう。
大病院や中小病院はスタッフ数も多く、組織の形態をとることが出来ます。経営部門、医療現場から独立した事務部門が存在するのが一般的です。こういう組織であれば、院長も経営の相談を出来ると思います、
しかしクリニックレベルでは、このような経営部門・事務部門がないところがほとんど。院長や奥様などが担当されているケースが大半ですね。
人件費だけを見ればコンパクトで費用もかからないので結構ですが、どうしても視野が狭くなりますし、何より相談する相手がいません。院長や奥様は一般的には経営やビジネスの経験がないので、模索しながら進めているのが現状でしょう。
都会の激戦区は別として、医療機関はまだブルーオーシャン。診療報酬は国に握られてはいますが、医師資格によりかなり守られた業界です。また経営的にも患者さんがある程度来院されれば、倒産することはほぼない。普通にやっていればつぶれない、非常に堅い仕事だと思います。
ただこの”安定した堅い仕事”という点が、逆に言えば誰が経営してもやっていけるという甘えを生みだしているのも事実ですね。全く経営センスがなく、勉強もしていなくても成り立ちます。また地方にいけば、多少横柄な医者でも患者さんは来院してくれます。
しかし何かの事情で経営や運営が上手くいかなくなった時や、コロナ禍の影響で患者が激減したりという環境変化には非常に脆いのが医師だと感じます。医師になるまでは大変ですが、開業したらさほど努力せずとも・・・という脆さを露呈します。
こういうピンチの時に、本音で相談出来て一緒に問題解決が出来るパートナーがいれば、どんなに心強いでしょう。それこそが私たちコンサルタントの出番であり、士業の先生方の出番なのです。開業後の先生方は孤独で、相談出来る相手が極端に少ないのが現実。親身になって一緒に考えてくれる人が必要なのです。
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真のパートナーになる方法
前置きが長くなりましたが、いよいよ実践編。目指すべきところはご理解頂いたと思いますので、実際にどうすればいいのかを考えていきましょう。
自社の現状把握と戦略立案
まずは自社の立ち位置を明確にすることが大切です。目指すべき場所へ行くには現状の戦力分析をして、過不足をどう対処するか考えねばなりません。人員的に満タン状態であれば人員増加する、問題解決が可能な知識とスキルを習得する教育、顧客への啓蒙活動、新規顧客開拓など。
何よりも大事なのは、スタッフ全員に自社の目指す場所や姿を明確に説明し理解を得ることです。これが出来ないと顧客にも訴える事は難しいと思います。
ゴールを明確にし、タイムスケジュールを立てて、逆算して今やるべき事を立案し行動していきましょう。
顧客対策
スタンスが決まったら、今度は既存顧客の分析に入ります。数値的なものはすでにお持ちだと思いますので、表面化していない問題がないか、今は良いが将来的に問題が起きないかを顧客に代わって予測する作業ですね。
机上の分析と共に顧客との対話も重要ですし、スタッフとの会話も非常に大切だと思います。スタッフ目線を知ることは、問題発見の重要なスキルになります。また顧客の近隣の状況、出来れば顧客の顧客(ここでは患者さん)の声も聴けると更に精度が上がります。
顧客も気が付いていない、潜在化している問題などを提案出来れば自社の評価は大きく高まると思います。税理士業務だけでなく、顧客のシンクタンクになるくらいの意気込みを持つと楽しく仕事が出来るのではないでしょうか?
ソリューション
発見し分析した課題を解決する段階です。ここで注意したいのは「答え(らしきもの)を先に与えない」ことです。
医師にもいろいろなタイプの方は見えますので、答えを早く知りたい!と焦る方もたくさん見えます。そういう方に答えを先に言ってしまうと、そこだけに集中して取り組み、本末転倒になるケースが非常に多い。手段が目的になってしまうという意味です。
また逆に非常に猜疑心の強いタイプの医師もいます。せっかく一生懸命に考えて提案した答えに疑いを持ち、信用しない。そもそもこういう関係を先に改善しておかなくては成り立たないのですが(苦笑)、このような顧客も要注意です。
ですので答えをどうぞうではなく、一緒に考える、院長やスタッフ全員に考えさせるというスタンスで提案した方が賢明だと思います。あくまで関係は対等、パートナーである事をお忘れなく。
まとめ
いかがだったでしょうか? すでにご承知のことばかりかと思いますが、改めてお話をさせて頂きました。
知っているのと実際に出来ているのとは違いますし、知っているけど出来ていない事のほうが多いような気がします。士業の先生方も今後社会情勢やテクノロジーの発展で、決して安閑とはしていられない職業だと思います。
医師ですら、進化し続けるAIに凌駕される日も近いでしょう(すでに現実化しているようです)。そういう意味でも、従来のやり方ではない新しい姿に進化していかないと絶滅するかもしれない時代です。
先生方の顧客は医療だけではないと思いますが、安定感や料金などにおいては医療機関は良い顧客ではないかと想像します。医師特有の難しさもありますが、今後も新規開拓を続けて頂きたいと思いますし、経営た労務の面から医療を支えて頂きたいとも思います。良い経営、良い労働環境なくして良い医療はあり得ませんから。
つたないお話でしたが、先生方のお役に立つことが出来れば幸いです。