開業医の問題点 マーケティング戦略

メモするビジネスマン

そもそも、マーケティングってどういう意味?

一般的にはよく使われている言葉ですが、医療のプロである先生方にとっては言葉程度しか知らない、あまり縁のなかった世界の言葉だと思います。

マーケティングという言葉をひと言で申し上げれば、

売れる仕組みつくり

抽象的過ぎてよくわかりませんね。医療機関的に言葉を変えるなら、

「患者さんに継続的に、たくさん来院して頂く仕組みつくり」

のことです。

ここで質問が出そうですね。「そんなの必要なの?いい医療を提供すれば、黙ってても患者さんはくるでしょう?」
そうかも知れません。地方で競合も少なく、選びようがないエリアならマーケティングという考え方も必要ないかも知れませんね。普通に開業すれば、ある程度は患者さんが来ますから。

しかし競合の激しいエリア、都心部などではそうはいきません。例えどこにも負けない医療を提供出来ると豪語しても、対象となる患者さんに価値を感じてもらえなければ単なる自己満足でしかないわけです。

患者さんに自院の存在を知ってもらうこと、そして患者さんにこのようなメリットを提供できると認識してもらうことなどを仕組み化して利益につなげる一連の行動をマーケティングと言います。

身近にあるマーケティング

人が何か行動を起こす時(物を買ったり、食事をするお店を決めたり、どのサイトをみようかなど)、どのようなことを考えているのでしょう?

1920年頃、アメリカ広告業界で言われるようになった消費者理論「AIDMA(アイドマ)の法則」 はご存知の方も多いと思います。
最近ではネットの普及に伴って、AICAS(アイサス)やAIDCA(アイドカ)、AIDA(アイーダ)など新しい考えが出てきて いますが、基本的には同じような考えかと思います。

AIDMAのAは、アテンション(注意)です。簡単に言えば「知る」ということです。
Iはインタレスト(興味)で、そのままの「興味を抱く」ことです。
Dはデザイヤー(欲求)で、「欲しくなる」。
Mはメモリー(記憶)で、「覚える」こと。
最後のAは、アクション(行動)。「買う」という行動です。

知ってもらって、興味をもってもらって、記憶してもらい、最終的に買ってもらう。私たちも商品を買う時は、よく似たプロセスをたどるのではないでしょうか?

今はネットで検索する事や、口コミを見て決めるなどのweb上の行動が付加されています。

またスーパーやコンビニの商品の配置、棚の高さ、周回の仕方など多くの商品をたくさん買ってもらうよう、あの手この手のマーケティング戦略が張り巡らされているのです。

医療マーケティングとは?

医療機関の仕事は物販ではなく医療を提供することですので、一般のマーケティングとは若干違うように思えますが、本質は何ら変わることはありません。

崇高な使命感ももちろん大事ですが、患者さんが来なかったら実現しようがありません。また来院して頂いた患者さんに満足頂き、また困ったら来よう!、こう思って頂けなければ永続的な繁栄も不可能です。

どうすれば、認知してもらって来院頂けるか

どうすれば、満足頂いて次回も来院頂けるか

これを考えて、実行し、成果を出すのが「医療マーケティング」なのです。
マーケティングというと商売ぽい印象になり先生方は嫌がるケースもあるかも知れませんが、医療を理解してもらうという意味ではこれも立派なクリニックの業務のひとつだと思います。

具体例

新規開業において、検討しなくてはならない要素は非常にたくさんあります。

例えば、

・ターゲットエリア内の人口動態
・そのエリアの周辺や流入してくる人々の動き
・競合医療機関の詳細な情報
・自院の強み、弱み
・どんなクリニックにしたいのかという想い
・新規患者の動向

などが該当します。また自院が新規開業なのか、既存クリニックの増患目的かでも変わってきます。

例えば、新規開業のスタートダッシュを例にとってみましょう。

● ケース1:地方都市の人口の多い住宅街での開業

戸建て開業 競合もあるにはあるがそれほど乱立していない。診療圏も十分ある。
こういうケ-スは認知作業は楽ですので、リアルでの宣伝オプションをまず投入します。
建物自体が宣伝になりますし、野立て看板、電柱看板、駅看板などを利用。また近所の自治会で講演会を実施するとか、こういう方策である程度採算ラインにのります。

● ケース2:地方都市の中心部での開業

場所、費用面から考えて、ビルテナント開業が多いと思われます。
この場合の一番のネックは、認知されるかどうか。
ビルの立地により認知度が左右されますので、宣伝活動はケース1とは大きく異なります。
ビジネス街か、駅近か、住宅地に近いかなど条件は多様化しますので、まずは十分な調査・分析が必要です。
都会ではWeb中心での認知活動が大事になってきます。Google広告などの広告宣伝費を、ある程度考えておかねばならないかも知れません。
戦略を決めて実施、検証していきましょう。

まとめ

ご開業前の先生にはピンとこない話だったと思います。
でも当然ながら開業エリアの特性の影響はかなりあると思いますし、開業後数年間は苦労するケースもございます。
事前にしっかりコンセプトを定めて、覚悟を持って進めていくしかありません。
残念ながら開業医は確実に儲かる仕事とは言えなくなってきましたが、地域医療に貢献する素晴らしい仕事だと確信しています。

良い経営なくして、良い医療なし。これが真実です。だからこそ、多くの経験値と的確な理論をもったマーケティング戦略は必須項目です。
良きパートナーとの出会いをお祈り申し上げます。