サラリーマンが独立して一国一城の主になる。志に燃えるところですが、良いことばかりではありません。
勤務医との違い
勤務医。病院の規模の大小はありますが、基本的にはサラリーマンです。
「私はサラリーマン根性は捨てて、経営者目線で仕事をしている!」
こう言われる先生もいらっしゃると思います。これは素晴らしいことだと思いますし、数少ない先生かも知れませんが、あえて申し上げます。
目線はそうでも、自らお金を使ってリスクを背負っていない者は経営者にはなれない。
嫌な事を言うやつだ、と思われるでしょうね。でも事実です。
確かにサラリーマンにも雇用を失うリスクはあります。これはこれで生活に重大な影響があると思います。でも、医師ならば再雇用はそれほど難しくないですよね。選ばなければ。
でも経営に失敗すれば、財産がなくなるかも知れません。借金のみ残って、どこかに勤務しながら返済しないといけないかも知れません。
また医療訴訟による賠償金に追われるかも知れません。
勤務医はいくら大変でも、そういうリスクは病院が背負ってくれます。
私も転職して、今は前より不安定になりました。少しだけ理解できます(笑)。
多額の借入金を抱えて、患者が来なかったらという気持ちは想像以上に厳しいと思います。
このあたりが、違うということになります。
開業医の院長の仕事
脅かしてしまったような始まりになりましたが、少し視点を変えて実際の業務をご紹介しましょう。
***ある開業医さんの1日***
午前9:00~12:00 待ち時間と、診療の満足度との板挟みを感じつつ診療に集中。
昼休み 銀行との面談、両替、その他書類や請求書の整理、処理。
午後15:00~19:00頃 午後診療。
20時30分ごろにクリニックを出て、家路を急ぐ。
全てがこういうふうではないですが、ひとつのモデルです。
ひとつ言えるのは、診療以外の雑務が非常に多いことです。
両替業務は毎日のことですし、備品の調達、修繕の依頼、業者との面談・折衝、介護保険の意見書作成、レセプト業務、返戻レセプトのチェック、診療報酬改定の対応、医師会の役割等々
非常に多岐にわたります。
奥様がやってくれたり、信頼できる事務スタッフがいればある程度は任せられますが、そうでないと先生ご自身がやらないといけません。
休み時間がたっぷり取れて、休日はゴルフに行って・・・こういう先生ももちろんみえますが、
誰かに任しているのだと思います。
如何でしょう?想像通りでしたか、それとも・・・
院長になるということ
クリニックの院長は、仕事が忙しいだけではありません。決定的に違うのは、雇用主になるということです。つまり、人を雇って仕事をしてもらわなくてはいけません。初体験ですよね?
病院時代も部下はいたし、看護師や検査技師などを使っていた(言葉が不適切で恐縮です)と思いますが、それは上司部下、先輩後輩、職場の同僚という関係でした。
それが今度は、院長と社員になります。
今まで共に頑張ってきた、時にはトップの悪口で盛り上がった・・・
それがなくなります(笑)。トップも前で悪口は言えません(笑)。
自分の見方も180度変わります。経営者目線に変わります。
給料払ってるんだから、文句のひとつやふたつ言いたくもなりますよね?
そしてスタッフのマネジメントも重要な仕事になってきます。女性の多い職場には慣れて見えると思いますが、立場が変わるので以前と同じようにはいきません。
不平不満も聞かないといけませんし、スタッフ間のもめごともほってはおけません。
万一全員、過半数退職したら閉じるしかない。
かなり神経をすり減らす部分だと思いますが、クリニック運営には必須の要素ですし、歩み寄る覚悟も必要になります。
これが院長業です。もう30年くらい早く開業していれば・・・悔やまれます(笑)。
このように、いろいろ大変な仕事です。
まとめ
かなりネガティブなお話ばかりになってしまいました。わざとではないのですが・・・
病院勤務の状況も一人一人違うでしょうし、開業に関する気持ちや心構えも違うので一概には言えませんが、想像よりは大変だと思います。
昔とは違い、患者さんの意識や情報量が全く変わってきています。
診てやるなんていうスタンスではだれも来ませんし、モンスター級の患者さんもたくさん誕生しています。厳しい時代だと思います。
でも対等な立場になってきた、ようやく医師と一般の方が話し合える時代になってきたと考えればよい時代なのかも知れません。
開業するということは、その地域の医療に貢献するということです。
その大志に向かって、スタッフ全員で努力して辿り着こうと頑張る。これも組織を動かす醍醐味だと思います。
正しい想いと、正しい知恵があれば必ず成功します。
恐れずに開業をお考え下さい。