開業して順調に患者さんにも来院頂き、借金返済の目途も経った時こう考える時があるかも知れません。
経営も順調に推移している。もっと大きくしたい!
しかし何から始めたらいいのか・・・
まずはご成功おめでとうございますと申し上げます。開業エリアや競合などによって異なりますが、競争の激しくなりつつあるクリニック経営が成功しているということは、素晴らしい事ですね。
普通ならばもう満足するところですが、もっと利益を上げたい、規模を大きくしたいという夢をお持ちの先生もいらっしゃると思います。
クリニック経営で利益を最大化する方法を考えていきましょう。
目次
1.クリニックの売上、利益とは?
本題に入る前にご存知の事と思いますが、クリニックの収益を簡単に式にしましょう。
「売上=患者数x患者さん一人当たりの診療単価」
「利益=売上ー支出(販管費・仕入れなど)」(税金、返済金などの要素は便宜上加味していません)
つまりクリニックの収益を最大化するには、
- 患者数を増やす
- 単価を上げる
- 支出を減らす
基本的にこの3点に絞られます。それでは各項目について深堀りしていきましょう。
2.患者数を増やす方法
診療時間を増やす
先程の式「売上=患者数x診療単価」の患者数の部分をさらに細かくすると、「患者数=診療時間x時間当たりの患者数」となります。
時間当たりの患者数が変わらなければ、診療時間を増やせば総患者数は増えるという理屈です。あくまで理論的にはという注釈がつきますが。なぜなら診療時間と患者数は正比例はしませんし、時間当たり患者数は減る事も考えられるからです。
この方法を取っているクリニックさんは結構多く、日曜日や祝日を診療するというパターンです。事項の医師を増やすという項目とも関係してきますが、働き手が増えれば可能な方法かも知れません。しかしそうでない場合は院長一人に負荷がかかり、疲弊してしまうというデメリットが付いて回る方法でもあります。スタッフさんのことも考えると、今の世の中には合わない気がします。
働くのが好きという先生や、開業して数年なら可能かも知れません。
医師を増やす
まず考えられる方法は「同科の医師数を増やす」ことですね。クリニックの収益は「患者数x患者単価」ですので、働き手の医師を増やして患者数をさらに増やすシンプルな方法です。
医師を増やすのにあたり注意しないといけない点は、医師の求人には時間がかかるという事です。先生方には釈迦に説法ですが、都会ならいざ知らず地方のクリニックでは新たにリクルートをしてもそう簡単には応募がありません。そもそも医局に籍を置く医師ならば、少なくとも1年以上前には教授にお伺いを立てなくてはならないので、時間を要します。1年~2年くらいのスパンで人材発掘をしていくべきです。
医師求人においては当然リクルート業者に頼らざる得ないわけですが、紹介手数料も高額になります。そもそも医師を増員するというくらいですから、大して負担ではないかも知れませんが・・・。
またようやく入職したとしても、すぐに退職してしまうという事も充分考えられます。雇用契約上では労働者が守られていますので、3年は在籍して欲しくても強制する事は出来ないという事は知っておいた方が良いかと思います。
クリニックの印象は、医師の占めるウェイトがどうしても高くなりますのでスタッフ選定以上に難しいですね。数も必要だけれど、クオリティは悪いと患者数が思うように増えなかったというケースにもなり兼ねませんので、人選びには充分ご注意下さい。
また医師が増えますので、診療スペースももう一人分必要になります。予め2診・3診体制を想定して設計されていれば問題ありませんが、もしそうでない場合は増築も考えねばなりません。
2.複数科目化する
例えば今が内科単独クリニックであれば整形を増科するとか、耳鼻咽喉科なら皮膚科とかいうように”診療科目を増やす方法”です。もちろん循環器科に糖尿病専門医を加えるのもアリです。科目的に相性がありますので、開業エリアの特性や患者層を考慮した上で検討しましょう。
前項の医師増員と基本的には同じ意味です。注意点や問題点は上のケースと同じですが、他科ですと診療内容に関してわからない事があります。院長がコントロールしにくくなるケースも時にはあるかも知れませんので注意しましょう。
3.多医院化する
多院化とは「クリニック数を増やすという方法」です。これも結果的には増員と言えます。
「え、1軒だけでも大変だったのに、さらに・・・!?」
そうですね、あの苦労をもう一度しなくてはなりません(笑)。脅かしてごめんなさい(笑)。心配するのもわかりますが、人間一度経験した事は案外簡単に出来るものです。やるべき事、タイムスケジュール、注意点などもすでにわかっていますからね。もう1軒作ることに関しては、1軒目を成功させた先生であれば可能だと考えます。
問題はそこでなく、新しいクリニックが増えるということは人員が増えるということ。医師数、スタッフ数が単純に倍以上になりますよね。
大企業でも中小企業でも同じですが、一番難しいのは「マネジメント」です。
同じ法人に入職したとしても、当然ながら価値観も個性も全員違います。その違う人間を同じ目標に向かわせて、継続して成果を出す事は非常に難しい。今のクリニックで成功したとしても、次のクリニックで上手くいくとは限りませんし、人数が増えた事で現スタッフへの影響もないとは言えないのです。
スタッフマネジメントを如何にコントロールしていくかが、規模を増やしていく時の最大の課題だと思います。
2.診療単価を増やす
売上の2要素のもう片方、「診療単価を増やす方法」を考えてみました。
診療内容を濃くする
すぐ思いつくのは検査を増やす、院内調剤なら投薬を増やすくらいでしょうか。患者負担が多くなる検査や画像診断は、患者さんが嫌がる場合も多いですし、かえって過剰診療と思われる事もありますので難しいところです。
しかし中には患者さんが希望する、または寄贈するように正しく提案することで、検査や画像診断が容易に出来る場合があります。要はニーズの掘り起こしとPR次第です。この点に関しては個別でお話致します。
また保険診療ですので、審査や高額点数の件もあります。ほどほどに留めておく方が良いと思います。せっかく行っても審査でカットされては元も子もないですからね。
診療の仕組みを効率化する
受付~お会計までの流れを効率的に変えて、診療出来る患者数を増やす方法。IT機器の導入でも可能ですし、仕組の見直しをすることで効率化は図れます。
医師を増やしたり、クリニックを増やすほどの効果は得られないかも知れませんが、この部分はやっておかなくてはならないと考えます。また効率化で待ち時間が減って評判が良くなり、結果的に患者数が増えることは充分考えられますので、売上増大という近視眼的な目線だけでなく永続的なテーマとして取り組んでいく必要があります。
自費診療に取り組む
保険診療は守られている反面、様々な制約がございます。科目にもよりますが、思い切って保険外収入を考えてみるのも得策だと考えます。
歯科医はもちろん、医科でも美容系、皮膚科、中には免疫系の点滴などを自費で行っているクリニックも多いです。都会が中心ではありますが、今後は徐々に地方にも広がってくるでしょう。衣食住などあらゆる事が満ち足りてきても、人間の永遠の欲望は、美と健康ですから。
どんなテーマに進出するか、どんな商材を選ぶかは知恵の絞り所ですが、テストマーケティングなどを駆使してどの程度反応があるかを調べることも出来ます。戦略を持って、試行錯誤しながら挑戦してみるのもお勧めです。
3.支出を減らす
利益を増やす方法として、「支出を管理し、減らす方法」があります。ここではあくまで利益と支出のみにフォーカスします。せっかく支出を減らしても税金の支払いが増加するだけでは意味がありませんので、実際行う際にはよく検討下さい。
支出を減らす目的は出ていくお金に着目し、資金を有効活用すること。クリニック経営では他の産業のようなキャッシュフローにあまり拘らなくても良いので、無駄な支出を減らし有益な使い方(例:人件費、教育関連、広告宣伝費など)に再投入することに集中すると良いと思います。
支出を減らすには、まず何にいくら使っているかを明確に可視化しましょう。時々(結構でしょうか?)何にいくら使っているのかを、ほとんど理解出来ていない院長がみえます。また税理士さん任せの先生もみえますが、内容はしっかり把握しておいて下さい。
スタッフが支出をエクセルなどで管理したり、奥様が管理しているクリニックもあります。前述した目的を忘れると手段が目的になってしまいますので、常に意識して取り組みましょう。
医療機関と言うだけでボッたくる業者、価格交渉しないのをいい事に何十年も据え置きという業者もいます。お互い、常に緊張感を持ってビジネスが続けられる関係に出来るよう、注意して下さい。
まとめ
概略になりましたが、利益最大化メソッドをご紹介致しました。
保険収入の範囲内ならば「患者数X単価=売上」ですので、
- 医師を増やすかクリニックを増やす(医師の数を増やすという意味では同じ)という方法
- 診療単価を増やす方法
どちらかになります。もしくは支出を減らして利益を上げる方法もありますが、限界はあります。しかし保険収入外(自費診療)に目を向けるなら、可能性はグッと上がってきます。科によりますが、歯科医や美容系などは自費診療に重きを置くスタンスに変化してきていますから。
当社では各項目における戦略と実行メソッドを用意しておりますので、ご遠慮なくご相談下さい。