今や医療も聖域ではなくなり、顧客である「患者さん第一」に考えていかなくては経営が成り立たない時代になってきました。経営に直結する集患や、web対策、スタッフ教育、増加している訴訟に対する対策など危機管理と利益獲得を図っていかなくてはいけないのです。
従来の構図に慣れた先生方には厳しい時代ですが、志を持つ先生にとってはまさに待ちにまった時代。やり方次第で大きな成果を手に出来る時代とも言い換えることが出来ます。
このページでは、集患と患者さん満足度を最大値にするための「医療マーケティング」を考えて参りましょう。
医療マーケティングとは?
先生方にはマーケティングという概念自体、あまり縁がなかったものだと思いますが、一般的にはかなり普及している考え方です。製造業、小売業など今やマーケティング無ではビジネスは語れないくらい、浸透していますね。
マーケティングは19世紀頃にアメリカで発祥、様々な研究と試行錯誤を繰り返して我が国にも導入されました。簡単に定義しますと「売れる仕組み作り」と言われており、ありとあらゆる製品やサービスを効率よく大量に売り、利益を最大化する為の仕組みを考え実践します。単なる商売の方法ではなく、人間心理を徹底的に分析し活用されています。
私も長く医薬品営業職に携わってきましたので、マーケティングは嫌というほど勉強し実践してきました。反対に医療という世界にはそのような考えがほぼなく、応用すればもっと良くなるのに・・・と思っていた事を覚えています。
このように非常に有益なマーケティングの仕組みを使い、医療経営で成果を上げる為に考えたのが「医療マーケティング」。
医療の世界でマーケティングが目指す成果は何か?
それは他の業種と同じく、最終的に「売上と利益」です。そして、それを生み出すのが患者数と患者単価となります。
一見医療とは相いれないような気もしますが、「健全な経営なくして良い医療は成り立たない」という言葉通り、民間医療機関は経営的にも成果を出さないといけないという使命があります。また昨今の患者ニーズの上位にあがる「患者対応・患者サービス」はどの程度なのか?
この分野もマーケティングの得意分野で、様々なリサーチ法やアプローチ方法が確立されています。
この強力な武器である「マーケティング」を、医療という環境に合うようにカスタマイズして成果を出そうという考え方がメディカルマーケティングです。患者さんのニーズ・ウォンツを察知し満足度を最大限に高め、集患と顧客化を目指します。
顧客(患者さん)が望んでいる事
さあ、それでは主役となる患者さんの望む医療とは、一体どのようなものなのでしょう?
その医療機関が提供できる医療レベルは?
当然で事でありますが、医療機関にはそれぞれの立ち位置に応じた「医療レベル」を求めるのではないでしょうか?
立ち位置とは、総合病院や個人病院、クリニックという規模に応じた医療レベルがあります。
クリニックは、一部の専門に特化したクリニック、かかりつけ医、在宅診療所など先生の磨かれてきた専門性に応じて形態を決めていきます。どの立場になろうとも、一定レベル以上の診療レベルは必ず期待されますので、ここはしっかり構築していきましょう。
患者さんは自分の想定の中で、求める医療を期待して来院します。総合病院には高度な検査や医療を、専門病院にはある分野に特化した技術を、クリニックにはかかりつけ医として親身に話しが出来る雰囲気を求めているはずです。ご自身の病医院がどのカテゴリーで、どういう期待をされているかをよく見極めることが大切です。万一不足しているなら、何らかの方法で満たさなければなりません。
患者サービスはどのレベルか?
「朝早くから半日以上待って、診察は2分・・・。いつもの薬を出しておきますねって・・・ひどくない?」
大きな病院の外来待合室でよく聞く話ですね。それでも患者さんの期待値を下回っていなければ良いですが、そうでないと次回はないかも知れません。田舎に1つしかない病院、アクセス上そこにいくしかないという患者さんに不幸な状況であれば仕方ないでしょうが、今やある程度選べる時代ですし、クリニックレベルですと厳しいでしょう。
ここではクリニックを想定しますが、開業している先生のところではどのように患者さん対応をしていますか? 私がよく耳にする患者対応を挙げてみましょう。
・笑顔で接する
・名前に様を付けて呼ぶ
・高齢者には特に優しくする
・電話対応に注意する
自分で書いていて笑えてきましたが(実践している医療機関様、失礼!)、このような事例は本当に多いのです。確かに全て外れてはいませんが、形だけで表面的な印象が伝わってきませんか? 具体性にも乏しく、何より熱を感じません。これは患者サービスではなく、何か標語?みたいなものですね。これでは相手には絶対に伝わりませんし、心を動かす事は出来ないと思います。
もし現状でいいと思っていらっしゃる院長先生が見えたら、一度待合や受付で患者さんの様子をよく見てみるといいと思いますよ。
満足度を最大にする根本的な考え方
イヤな事を申し上げましたが、患者さんに喜んでもらおうと本気で思うならば、真剣に取り組んで欲しいのです。体裁だけ取り繕ったような、綺麗な言葉は必要ではなく、もっと熱い想いがこもった実際に則した対策が必要なのです。
しかしいきなり机上で良い案を出すのは難しいですね。どう進めていけば良いのでしょうか?
まずは院長先生が本気になること。この部分が最も大事で、絶対に素晴らしい患者対応が出来るクリニックにするぞ!という熱い決意をして下さい。患者対応を考えだすということは、患者が減っているか、評判が悪いか、先生自身が気づいているかだと思います。何とかしなければ!という気持ちだと想像します。ならば絶対に良くしようと決断しましょう。
揺るぎない想いが固まったら、その想いをスタッフに真剣に話します。恰好つけなくていいから、心のままに熱を伝えるのです。
普通のスタッフならその想いは必ず伝播するはす。熱く真剣な想いは人に感染しますので、スタッフが共感しないならそれは先生の伝え方が良くないか、足りないという証拠かも。
実際は、100人全員にウケるクリニックを作ることは難しいでしょう。しかし数多の医療機関の中から、自院を選んで来院頂いている患者さん全員に応えたい、喜んで欲しい!という気持ちがなければダメなのです。一人一人違う患者さんですが、皆のそれぞれの笑顔を見たい。そんな気持ちで診療を続けていけば、経営難なんて絶対に乗り越えられると確信しています。
先ほど患者さんは全員違うと申し上げましたが、当然求めているニーズも全員が違います。それを叶えるには、一体どうしたら良いのでしょうか? ここを一番知りたいと思います。
一番大事な事は「相手をよく知ること」。相手のして欲しいこと、望んでいることを理解せずして、満たすことは出来ませんね。知る方法は他のページで詳しくお話しますが、一度ご自身で考えてみて下さい。自分が患者だったらどうして欲しいのか、家族が病気で悩んでいたらどうしてあげたら嬉しいのかを考えてみましょう。
患者さんのプロフィール、性格、趣味嗜好などを先生は正しく把握出来ていますか?
診療や対応に関する満足度を理解していますか?
何かをする時や問題にぶつかった時は、必ず「患者さんは何と求めているのか?」という原点に立ち戻ることをお勧めします。
まとめ
先生方には多少違和感のある内容だったかも知れません。よく言われる事を申し上げるなら、医師は少し特別な環境下で育ってきたと思います。そうなれば自ずと、普通の会社員や主婦とは違った考えになるのも理解出来ます。幸い今の若い先生方は良い意味で”普通”になってきていますので、このページで申し上げた事はよく理解頂けるのではないかと考えます。
冒頭に申し上げたように、医療はもはや聖域ではなくサービス業と認識されています。であるなら、患者さんに喜んで頂ける医療と患者対応を実践していかなくてはなりません。その鍵となるのが「医療マーケティング」ですので、念頭に入れておいて下さい。