開業医の問題点 スタッフマネジメント

スマホをいじる若い女性

念願の開業も果たし、患者数もまずまず順調。
「診療技術も高いし、患者受けもいいし、早めに借金を返済して・・・(にんまり)」と本人は思っていますが、クリニック医療はチーム医療ですので、スタッフがいて初めて正常に機能します。
そんな大切な身内(スタッフ)を大事にしないと、手酷いしっぺ返しを受けることになります。

スタッフの重要な役割

「無事に開業して、患者さんも徐々に増えてきている。このまま1~2年で充分採算ラインに のるなあ~。将来も安泰だな(笑)」
開業して半年。診療・経営共に順調、ホッと一息つきたい頃かも知れません。
でも”好事魔多し”です。油断していると、思わぬアクシデントが起こるものです。

それは、スタッフ問題です。
クリニックの業務内容のページでもお話しましたが、クリニックを運営していく為には、スタッフの存在は必須です。
診療の準備、受付、患者対応、医療材料や医薬品の在庫管理等々業務は多岐に渡り、スタッフさんが分担して役割をこなしてくれています。

またクリニックの顔でもあり、良き相談役でもあります。長く勤めれば看護師さんや事務員さんと患者さんとの人間関係も築き上げられ、
「先生は愛想ないけど、○○さんが親切にしてくれから嬉しいわ~」という声も意外と多いのです。
業務も、患者さんとの対応もチームとして成り立っている訳ですね。
これら全てを先生が一人で行うことは、物理的にもスキル的にも絶対不可能だということは当然おわかりだと思います。

勘違い

しかし利益最優先になり、患者さんのことは大事にしても(お金に見えるのかも知れません)、一生懸命働いてくれるスタッフのことは二の次。給料払っているから当然くらいの先生もいらっしゃいます。
こんな状態では、たとえ高額な給与を払っているとしてもやりがいや一体感は生まれませんね。
そしてある日、熟年離婚のように「先生、お話が・・・」と退職の意志を伝えられるのです。
まだ事前に話してくれる方はいいですが、突然出勤しなくなった・・・こういうケースも大変多い。
さらに、スタッフ全員が話し合って一斉に退職するという事もよく聞きます。

こうなっては診療どころではありません。一時的に閉院して、改めてスタッフを急募するしか方法はないのです。患者さんからも信用がなくなり、再開しても影響がなとは言えません。

マネジメントの重要性

ひと言でスタッフ問題と申し上げましたが、スタッフさんに関わることは、
待遇・教育・業務効率・対人関係など 極めて多岐にわたり、クリニック経営の極めて大きな課題です。
クリニック経営はスタッフ次第と言っても過言ではないのです。

人が仕事をするにあたり、強い動機となる要因は何だと考えますか?

「働く理由? そりゃ、お金とか働き甲斐とかでしょう? 」

そうですね、先生も勤務医として働いてきたからわかりますよね。
でも本当に理解していないとも言えます。
医師と一般スタッフとの隔たりはものすごく大きいんです。

勤務医は確かにサラリーマンですが、高収入でやはり貴重な存在です。
特に医師確保に汲々としている、地方の病院勤務であれば尚更ですね。
極端な言い方をすれば、文句を言わなければどこでも働ける、市場価値の高い職種です。

看護師さんも少しにているところもありますが、医療スタッフの働く理由は、
・より良い医療を地域の方に提供したい、貢献したい。
・自身のスキルを伸ばしたい。
・組織に所属して働きたい。
・友人を作りたい。
・お金を稼ぐ為。

他にもあると思いますが、主な理由はこのようなものです。

上記の何かを満たす職場であれば、条件が変わらない限り続けていきたいと思えるはずです。

特に医療職を目指してきた方に共通して言えるのは、

「患者さんに共感し、痛み・悩みを何とかしてあげたい!」
いう使命感・貢献欲求を持っている方が多いと思います。

注意すべきこと

自分のクリニックのスタッフは、患者スタッフにも優しく接しているし、スタッフ同士仲が良くて大丈夫だよ、 こう過信しているドクターは結構多いのではないでしょうか?

でも、当のスタッフは不平不満がいっぱい・・・こういうクリニックも珍しくありません。
どこかで(用意周到なケースもあります)一気に爆発する。
近所で新しいクリニックが開業したりするタイミングで、一斉に退職と いうことも決して珍しくはないのです。連れだって辞めていく・・・女性ならではの行動特性かも知れません。
またスタッフがコロコロ変わるクリニックは、患者さんにも悪いイメージを与えます。

良い職場作り・動機付け

それでは、改めてスタッフが働き甲斐のある職場、働きやすい職場について考えていきましょう。

私も30年以上サラリーマンをしていましたし、男性・女性のスタッフをマネジメントしておりましたので この問題に関してはいろいろ考えさせられました。
その都度策を練って実行し、結果検証するというサイクルを何度も繰り返してきました。
人によって、その組み合わせによって問題も何通りもあり、本当に難しい問題です。
特に女性は難しい・・・。そういう意味では、先生方は厳しい環境なのかも知れませんね。

最近はクリニックでも理念を掲げて、スタッフに唱和させているところもあるそうですが、 本当に賛同しているのか、嫌々やらされているのか、相手のことをよく考えてあげねば なりません。

・先生がどういう医療を提供したいのか、どういうクリニックにしたいのかなどを、自分の言葉で 相手に伝わる言葉でスタッフに伝え、賛同を得ることが大切です。
・向上心のある医療スタッフの人材育成にも、心をさかねばなりません。
・女性特有のライフスタイルに理解を示し、協力する体制をとらねばなりません。
・安心して発言出来る職場、伸び伸び働ける職場を作らねばなりません。
・利益を還元する

等々、先生がしなくてはならない事はたくさんあります。
でもこういう職場なら、きっと退職者も少ないでしょうし、働きたいという方も多いと思います。
スタッフそれぞれを大切に扱い、しっかり話を聞いて共感し、対応していかねばなりません。

まとめ

人を雇用するというのはなかなか大変です。
大袈裟に言えば、その方の起きている時間のほとんどに責任を持つということでもあります。
責任重大ですが、得るものもまた大きい。

一緒にクリニックを運営していける環境になれば、これほど嬉しい有意義なこともないと思います。今から心構えをして、準備していきましょう。